サットンプレイスの効果

1968年の7月、フランス・ルーアンでレースは行われた。
その前日、S氏から電話がはいる。 空冷エンジンのマシンで勝負してみろという指示であった。
チーム監督のN良夫氏は、反射的にこれを拒んだ。 N氏は、既に空冷エンジンでレースが戦えるかどうかをイギリスで試していたのである。
ジャーナリストの軍司貞則氏によれば、次のような経緯であった。 N360の売上はぱったりと止まり、Hは大きなダメージを受けたが、S氏自身は不起訴となった。
これもまた、S氏にとっては当然であったろう。 東京地裁特捜部は、平均的な運転技能のドライバーが時速別キロを超すスピード下で事故をおこす可能性について1年間検証を続けたが、刑事責任を問えるほどの実証結果は得られなかった。
空冷エンジンへの執着S氏はF1を、技術の成否を問う実験場と考えていたが、そのレースで空冷エンジンを試そうとフランスGPに先がけて、HチームはイギリスのシルバーストーンのGPコースを使って空冷エンジンのテストを繰り返した。 Sがすすめる空冷エンジンは一ラップでエンジンのパワーが二十馬力ほど落ちた。
二ラップ目も二十馬力落ちた。 ヘッドをしめつけるボルトも折れた。

そのためクルマを支えるサスペンションの設定ができない。 エンジンの出力が周回ごとに変るのでサ人殺しと言われた技術者「オヤジさん、これだけは私の言うことを聞いて下さい。
何度テストしてもダメなものはダメです。 空冷エンジンを使ったうちのマシンでは無理です。
それに私はいままで空冷エンジンでのレース出場の話は聞いていません。 危険です」(中略)「ともかく空冷で走れ!やってみなくちゃわからないじゃないか」(中略)「オヤジさん、あれを走らせちゃダメですよ。
空冷ではレースには持たない。 それに危険ですよ」Nは電話口で何度もそう訴えた。
ところがSの反応はなかった。 言葉につまったようだ。
突然、「お前の話なんか聞いてねえよ。 ともかく走らせろ!」そう言うなり話を切った。
スペンションをテストしているとき軸が折れたりして足まわりが固まらないのだ。 危険きわまりなくとてもレースを走るクルマとはいえなかった。
(軍司泰則著「HSの真実」)N氏はS氏を必死で説得しようとした。 しかし、S氏は受け付けない。

水冷式でなければならないという固定観念に囚われていては進歩がないという信念であった。

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